心感デッサン
心感デッサン
『雨日和』
-行き-
空が泣きべそかいている
靴の音は水に絡まり ベシャッ ベシャッ と足を引っ張る
にじんだ空と同じ色の 曇天色の桃の花が ポップコーンが無数に弾けた様 天に向かい咲き乱れて止まない
何だかとても冷えた雨風が胸に土に染み入る ヒトは赤やら黄色やら透明などの花を咲かして歩くのだ
雨粒は多量の雫で水溜まりに 小さな輪を吸い込み歪んで揺れる いつもの景色も今朝は薄白霧 濁って見える
嗚呼、私は無意味な場所へ吸い込まれるように雨粒に背中を押され進んで行くのだ
一斉に雨粒を吹き飛ばす群衆の中へと…
-帰り-
相変わらずの曇天だ
びしゃびしゃ雨粒は吹き付ける
唯、私は嬉しいのだ 傘に弾ける不安定なリズムが胸を弾ませる
靴の先は色が変わった しかし
黒い木の影にハッキリと
確かに無数の白乳の微塵な雨粒の落ちては現れる姿をその時見たのだ
シトシト ザーザー重たい雫は
まだ枯れた茶色の葉をゆらゆら上下に永遠に揺らす
しかし私は新しい眼で其を見る事が無性に胸をワクワクさせる
行きも帰りもヒトは無言だ
まるで皆の心の中にもグッショリ雨粒が流れている様
こうべを垂れてうなだれてゆらゆら揺れている
しかしながらまたあの春の鳥は同じ場所で尾を小刻みに揺らして 今から飛び立とうとしている 曇天色と同じ羽を広げて近くの空へと
雨粒はポタポタ雫を落とし
腕にカバンに色違いの印を浸ける 靴先でしぶきを跳ね上げながら
チカっと続いては灯る灯籠をたよりに 霞行く白を掻き分けてやみくもに進む 一本道も 悶々と白く煙る程に
私は霞に消えていく 一体化して全て白紙となれ
其が私と雨日和の調和だ
0コメント