心感デッサン
心感デッサン
『不眠症』
隣では熱を発症している人が
膝を立てて眠っている
私は誰の為か薬を減らしたので
こんな夜更けに脳は冴えざえ
歯車は逆にゆっくり回転し
瞼だけはだらだら重く
瞬きするのにも瞼力が必要で
屈折した淡い光が眼球を射す
第三者だけは起きていて
世界の天気を淡々と告げている
秒針は容赦なくカチカチ鳴り
刻一刻と夜明けの時刻を刻む
眠れないのだ
真っ黒なブラウン管のガラス
まるでブラックホールの様だ
白い朱鷺は白雪に溶け
長いくちばしを開け白い煙を吐くのだ
朱鷺は翔んでいく 次の場所へと
其の直ぐ跡に路を残して
ヒトも動物も鳥達も皆
其の後ろに確かな路を創るのだ
ひとつの大きな仕事や芸術を
其の跡に創るのを貴方と私は見る
時と云う過去と未来との二重の風景を
私達は確かに其処に見る
其をあの方は云っていた
私はほんとうと誠を訪ねると
貴方のその答えを聞きに
私も直、参りましょうや
今日は一時期笑顔がこぼれた
暖かな春風が吹いたのだ
夜道 細い路地から 高台の
パノラマの拓けた一望の景色が見える
眼が悪い私にも良く見えた
遠くにピンクと白の光る提灯の群れ
あぁ、桜が咲いたのだな…
夜桜を彩る灯りだ
なんだか安堵の溜め息をついて
生命を司る石段坂を下る
媚薬は脳内を此処まで掻き立てる
陥り眩む 睡魔の手から…
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