心感デッサン

2019.6.18
あの大きな魚の荒んだ屍は
 何処に行っただろう

最後に見かけたのは
 水路の溝の暗闇だった

肋骨が太くて鋭くて剥き出しで
 皮は剥げ 目は銀の硝子だった

豪雨がやってきて水かさが増し
 どうどうと水面を飲み込んで

いつも見掛ける鉄橋の上から
 目眩ましする白光がさえぎる

其の美しさに匹敵する程の
 美しい湧水が流るる小川

あの魚が生きていた頃はきっと
 綺麗な光る鱗を優雅に

ゆらゆら翻し仲間と共に
 たまに来るヒトからパン屑を貰い

何事もなく広い御池で
 困ることなく泳いでいたのだろうに

いつの間に何が起きたのか
 知っているのは水面ばかり

木も水草も底の小石も葉っぱさえ 息を飲んだに違いない

きらびやかな姿は最早なく
 在るのは灼熱の初夏 日に日にどす黒く腐敗していく其の姿

空は晴れたら水色で
 日射の無い日は曇天で

此から目覚める紫陽花
 其の真下で 魚は腐っていく

生きる息吹と 死に逝く屍
 こんなにも青い汗まみれの空の下

仰げばチカチカ眩しい空の下
 光は生も死も丸飲みにして

今日一刻一秒を淡々と刻み
 命の復活と末路を同時に進行させる

魚のあの太い肋骨はとても
 衝撃的で 生きていた時の

腹の形を縁取っていて
 何だか私の何かが縮まった気がした

此からいつもの細い坂にも
 季節の涙 幾多の命が散る事だろう

私は其の季節の上を歩いて
 せわしい蟻に『今日も元気かい』と

尋ねて登って降りるのだ
 緑を枯らす水をかける農夫も
予想だにしない突然の死も

今日私は生きている

今日私は生きている

art chacrol and peam gllary

絵も詩も芸術の全てとして向かいます

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