心感デッサン
2019.9.26
季節は 三層を保つ風物です
一篇 空
口笛が吸い込まれ溶けてい
く其は雷雲を隠した 透き通る
流るる微かな帯が漂う雲の果て
二編 川
荒々しい姿を消しこんなに穏やかな
其は鏡 川辺に茂る緑のざわめきを
教えるよふに
其所に刻んで 眼にて語らん
三篇 草
チクチクギザギザ腕にまとわる
夏の思ひ出 残り火を刻んで
根っ子私の靴をからかって引っ掛ける
何処までもはしゃぐ
其所に気付いて飛び立つ烏
眼を奪う 其は滑空し
自らの分身を地に水に影を落とし
共に焼き付け飛び去る
生命力 私の歩幅で 一体感
何もかもが揺るらかで
心を取り出し 触る可愛い風
荒い息 生きようと必死だった
木漏れ日は楕円を揺るがせ
鮮やかにまた暗く
私の頬に 光と影を交互に示し
暖かさと淋しさの不安を落とす
ガードの上を列車が
ガタン ガタン と 夢から現実を呼び覚ます
『私は此処にいたのだ』
時を忘れた野良猫 尻尾を振って
時を止めたヒトの住まい
雨凌ぎの傘の家 時代を避けるかのよふに
呼吸いよいよ緊迫し
明日の声など耳をふさぎ
誰かが私を試すのだ
『生きろ』と云うか『朽ち果てろ』と云うか
指先で魔水に触る あと
何回季節が巡ったら
私は 宇宙塵と成りて
この世の生命の息吹きを抱き
空の風に散り行くだろうか…
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